







坪田高濃度地区
火山ガス高濃度地域に指定され住めなくなった街。
2000年の噴火から7年、人の住んでいない建物の瓦解は予想外に早い。
泥流で埋まり頭だけを残す鳥居、台風で飛ばされ基礎だけの残る家屋。
木々はガスの影響で枯れ果て白い体を横たえる。
頭上には360度の秋の空が、眼下には凪いだ海が広がっている。
傾き始めた太陽が一面を紅く染め始める。
子供たちの駆け回る声が遠くから聞こえてきそうな光景。
でもいくら耳をすましても子供も、鳥の鳴き声すら聞くことは出来ない。
人々の去った後、一面に生い茂る雑草たちが主役を演じている。
暖かな西日の中、穂を湛えたススキが今この街を飲み込もうとしている。
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